Your Sweet Night

主に防弾少年団と韓国語の勉強。(ときどき他ドルも)

〈花様年華〉2022/06/15 ナムジュン


急いでラーメンを食べる子どもを見下ろした。8才、いや10才くらいになったところだろうか。冷めてもない麺をかき込む途中にも、ときどき顔を背け僕の様子を伺った。名前を聞くとウチャンです、ソンウチャン。と答えた。くたびれたTシャツにラーメンの汁が飛ぶや否や指で擦りながら、おばあちゃんにまた怒られる、と呟いた。


ウチャンを初めて見たのは2ヶ月くらい前だった。ガソリンスタンドから帰ると、後ろ側のコンテナの前にウチャンが立っていた。その時は、ソンジュ駅から外に出る近道を探してここに近づいたんだろうと思った。コンテナの村は小さい子どもが住むところではない。しかし2週間くらい経った頃、コンテナの前の空き地から古びたサッカーボールを一人蹴っている姿を見た。それ以降何度かウチャンと出くわした。いつも夜遅くまで一人ウロウロし、同じTシャツ、同じズボン、同じ運動靴を履いていた。少し見ただけでも、気遣ってくれる大人がいないのは明らかだった。だからと言って、僕がしてあげられることはなかった。僕は自分の面倒をみることだけで手いっぱいだった。僕はいつも知らないふりをして、ウチャンを通り過ぎた。


その日のガソリンスタンドでの仕事を終えてコンテナの村に帰って来たのは夜11時を少し過ぎていた。鍵を探してポケットをくまなく探していたのだが、少し離れたところにしゃがみ込んでいる影が目に入った。ウチャンだった。いつもそうしていたように、気にしなければそれまでだった。鍵を探してコンテナのドアを開け、一人ラーメンを食べ、眠りにつけばそれまでだった。なのに今日はできなかった。したくなかった。


空を見上げてみた。一日中曇っていた。夜空にも灰色の雲がかかっていた。星の明かりのようなものは一つも見えなかった。ふと腹が減った。僕の記憶が正しければ、コンテナにはラーメンが一つしか残っていなかった。蓄えておいたものもなく、これから蓄える余力もなかった。それが僕の状態だった。ポケットから取り出した鍵を見下ろした。田舎の村を去りながら振り返って見た風景を思い浮かべた。バスの窓に書いた文章を思い出した。


僕はウチャンの方へ歩いて行った。


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